高まる信用不安と金投資需要の急増

国債離れと金投資需要の急増のメカニズム

金融危機が過ぎても金価格は歴史的高値圏で推移している。金の世界からマクロ経済を見ていると、信用不安が未だ根強く投資家の心に巣食っていることを痛感する。

 

10年8月に発表された金需給統計・国別金投資需要でも、ドイツ44.4トン(前年同期比59%増)、スイス26.1トン(同19%増)という数字が目に付く。ドイツ、スイスといえば欧州では金融システムが最も堅固と思われていた地域だ。スイス銀行出身の筆者の感覚でも、スイス国民にとって金融は基幹産業であり、世界に誇る健全な銀行システムは国の売り物だ。

 

ところがUBS米国法人の個人顧客脱税幇助をきっかけに、スイスの銀行も当局への顧客情報開示に踏み切った。顧客名が出ないナンバーアカウントで世界の富裕層マネーを呼び込み、その運用で多額の収益を叩き出すスイス銀行流のビジネスモデルは崩れてしまった。堅固であるはずのスイス銀行システムに風穴が開いたのだ。国内の預金者は思わぬ自国銀行の脆弱性に敏感に反応。預金を引き出し、破たんリスクゼロの金にマネーをシフトし始めた。その結果、金投資需要が急増したのである。

銀行への不信の高まりが金へのシフトを後押し

ドイツも然り。欧州銀行資産査定ストレステスト)で、ドイツのヒポレアルーエステート銀行が不合格になった。多くのドイツの

 

中堅銀行では、貸付が伸び悩み、溢れる個人預金の運用先に困っていた。そこで、自分たちにも理解できないような複雑な証券化商品に巨額の資金を投人していたのだ。その事実がはからずも明るみに出てしまったのがSECのゴールドマンーサックス訴追の時であった。99年まで同社会長兼CEOを務め、昨年まで財務長官たったポールソン氏が組成に関わったことで問題になったゴールドマンーサックス発行のCDO(債務担保証券)の購入者(二機関)のうち、ひとつがIKBというドイツの企業向け融資専門の銀行だったのだ。こうなるとドイツの預金者も疑心暗鬼となる。スイス同様、銀行預金を引き出して金にシフトする動きが顕著になった。

 

国別金投資需要統計では米国30.3トン(19%増)も注目された。米国では地銀の破たんが日常茶飯事となっている。米国の銀行監督当局は、8月にもシカゴのショアバンクなど地方銀行8行を新たに閉鎖。これにより年初以来の地銀破たん件数は118件となった。8行の閉鎖に伴う米連邦預金保険公社(FDIC)の預金保険基金への負担は400億円相当と発表されている。地銀といえば個人投資家に最も近い銀行であり、心理的ショックは大きい。当然、預金引き出しは加速し、金がその受け皿の一つになる。

 

そして中国。金投資需要は36.3トン。なんと121%という激増だ。ここでも、中国大手銀行の経営体質が不安材料になっている。そもそも大株主が国という実質国策銀行なので、地方政府が計画するいかにも怪しげな不動産融資案件などに対しても、党の指示という。神の声"を無視できず粛々と融資を拡大してきた。

 

結果は当然、不良債権の山。そこで中国農業銀行は、この不安定な市場環境下で、あえて史上最大規模の増資を実行したわけだ。今後も景気減速となれば、党からい
つ何時、無理筋の大型融資案件を突きつけられるか分らない。その時に備えて体力を蓄える自衛措置とも言えるのだ。中国の場合、大手銀行の融資額に対する"行政指

導"が最も効果的な金融政策と言えよう。このような銀行の実態を見抜いている中国の富裕層が金を買い漁るのは、当然の反応に見える。

 

一方、国別統計でダントツのマイナスの数字を出している国が、我がジャパンだ。マイナス20トン、つまり投資家の買いより売り戻しのほうが20トン多いという売り超過"状態が続いている。

 

達人のFX比較セントラル短資FX 売買シグナル